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ifネギま! 〜 一話一妄想シリーズ 〜 

第八話 



 魔法の本を手に入れるため、図書館島への侵入を敢行したバカレンジャーとネギたち。バカレンジャーたちの持ち前の運動能力を生かし、侵入者撃退用の数々のトラップに悪戦苦闘しつつも奥へ奥へと進んで行くのだが……。 


 図書館島深部。 
 数々のトラップを、そのとても人間技とは思えない身体能力で切り抜けてきたバカレンジャー+2たちの前に、新たな難関が待ちかまえていた。 
「こ、これは……」 
 明日菜が口をぽかんとあけ、呆然とした口調で言う。そばにいるネギも、まるで明日菜と姉弟のように、同じ顔で立ちつくしていた。明日菜と並んで立っているまき絵は腕を組んで眉を潜め、クーは何故か大喜びし、楓はいつも通り微笑みを崩していない。 
 彼女らの前に広がるのは、見渡す限りまんまんと水を湛えた池──それともこの規模では湖か──であった。 
 高すぎてどこにあるのかわからない照明の薄明かりに照らされ、静かにその光を照り返している。 
 水面にはうっすらとしたもやが漂っており、お互いの姿が見えないほど濃いわけではないが、対岸は霧にとけ込んでまるで見えない。 
 ネギはふと思い立ち、岸にほど近い本棚にある本を一冊手にとってみた。どういう処理がしてあるのか、これほど湿気にさらされていながら、本は傷んでいないようだった。 
 本を本棚に返しながら、ネギはここでも魔法の力を感じていた。 
 湖のすぐ手前で、木乃香とともに地図を見ていた夕映は、何度か地図と目の前の湖とで視線を往復させたあと、満足そうに一つうなずいた。 
「順調です。この湖を渡れば、目的地までもう一息ですね」 
 その言葉に、明日菜が驚いて夕映の方を向いた。 
「わ、渡る? でもボートみたいなものは見あたらないけど、まさか泳ぐの?」 
 夕映は慌てず騒がず答える。 
「大丈夫です。この地図によれば、水深は一番深いところで腰まで、大抵は膝の上あたりだそうです。歩いて渡りましょう」 
 今度はまき絵が嫌な顔をした。 
「腰まであるんでしょ? 服濡れるのやだな……岸づたいに向こう側まで行けないの?」 
「行けないこともありませんが、明日の授業までに帰ることを考えれば時間的に難しいですね」 
 まき絵は腕を組み、不満そうに唇をとがらした。そして、湖面から出るうっすらとした霧のせいで対岸の見えない湖の、暗い水面をしばらく見つめていたが、ついに肩を落とし、ため息をつきながら言った。 
「じゃあ仕方ないか」 
 それを待ちかまえていたかのように、メンバー中最もテンションの高いクーが右手を振り上げて言う。 
「それじゃあ出発進行アル〜♪」 
 先導役の夕映と木乃香がまず足を水に浸し、続いてバカレンジャーとネギが次々と湖に踏み込んでいった。 
 靴の中に水が侵入し、あっという間に靴下をぐっしょりと湿らせる。一歩進むごとに靴の中の水がグチョ、グチョ、と音をたて、その気持ち悪さにまき絵などは半泣きになっていた。 
 ネギは他の女子生徒と違ってズボンなので、一際服が水を吸って重くなる上に、体格が小さいので水の抵抗が大きく、歩きづらいようだった。 
 みんなのペースに追いつこうとして転びそうになるので、明日菜が手を引いてやっていた。 
 夕映の言う通り、広大な面積のわりに湖は非常に浅かった。 
 うねるような起伏はあるものの、靴底を通して感じる湖底の感触はコンクリートのように固く、なめらかで、この湖が明らかに人造物であることが知れる。 
(いかに侵入者撃退用とはいえ、こんな大がかりなものを作った者たちとは、どんな人たちだったのでしょうか……) 
 楓とは別の意味で表情の変化に乏しい夕映だが、心の中ではそんなことを思い、神秘に満ちた冒険に心を躍らせているのだった。 
 つきあいの長い木乃香はそんな夕映の高揚ぶりをわかっているらしく、優しい微笑みを浮かべながら、一心に先頭を歩く夕映を柔らかく見ていた。 

 静かに水面を揺らしながら、一行は進む。 
 腰まで浸かる最深部を通りすぎ、再び膝上まで水面が下がってきた。 
「うえー、下着ぐしょぐしょー」 
 と、まき絵がすっかり水びたしになったスカートを両手で持ち上げながら、気持ち悪そうに言う。 
 ネギの手を引いていた明日菜はぶるっと震え、 
「つ、冷たいーっ。なんで湖が…」 
 と小さく泣き言を漏らしている。 
 体力的に一番優っているはずのクーと楓は、明日菜とネギのさらに後ろを歩いていた。楓は相変わらずだが、クーはさすがに元気を使い果たしたらしく、黙々と最後尾を進んでいる。 
(さすがのバカレンジャーのみなさんも、この体温を奪われ続ける行程はつらいようですね) 
 と夕映が一抹の不安を抱いた時、横を歩いていた木乃香が前を指した。 
 木乃香の指の先を追った夕映は、目と口を軽く開く。 
 弱い光源のせいでぼんやりとしか見えないが、湖の水面にはありえない凹凸のある輪郭が見えた。 
 うれしげな笑顔を浮かべ、木乃香が指を前方に突きだしたまま後ろを振り返って大声で言う。 
「みんなー、向こう岸ー!」 
 沈んでいたバカレンジャーとネギの顔に一気に笑顔が戻った。 
 夕映も、背中で沸き立った雰囲気を感じ、かすかに笑みを浮かべる。 
 さあ一気に渡りきってしまおうと足を踏み出した瞬間、その踏み出した足の足首に、何かが巻き付いた。 
「!?」 
 悲鳴をあげるいとまもなく、夕映の足首は強く引っ張られた。体重をあずけかけていたせいで、あっという間にバランスを崩して水の中に倒れ込む。 
「夕映!」 
 すぐ近くを歩いていた親友が水柱を残して消えたのに気づき、木乃香が悲鳴をあげた。 
 夕映の足首をがっちりと捕えた何者かは、そのまま猛烈な勢いで夕映をひっぱっていく。水面に助けを求めるように突き出された夕映の手が、波を立てながらあっと言う間に遠ざかっていく。 
「夕映ちゃんっ!」 
 明日菜はネギの手を離し、夕映を追おうとする。が、膝の上まである水に足をとられ、ばしゃばしゃと水ばかり跳ね上げてまるでスピードが出ない。 
 明日菜のあとを必死で追いながら、杖を包む布を外すネギ。杖の頭が出たところで、自分が今魔法を使えないことに気づく。 
 呆然と立ちすくむネギのすぐ横を、風をまいて何かが通りすぎた。 

 楓だ。 
 固い地面とほとんど変わらないスピードで、楓は水面を走っていた。 
 いったいどういう原理なのか、靴がほとんど沈んでいない。 
 歯を食いしばって水をかき分けながら進んでいた明日菜をあっという間に追い越し、すでにネギの視界からは消えつつある夕映の手を追っていく。 
 残されたネギたち五人は、楓を信じつつも胸のうちに不安がわき上がるのを押さえられず、なんとなく一カ所に寄り集まり、二人の帰りを待った。 
 十分ほども経った頃、夕映と楓が消えていった霧の向こうから、水をかき分ける音が聞こえてきた。 
 ほどなく見えた人影は、一つ。 
 楓はうなだれ、いつも微笑みを浮かべている顔に悔しさをにじませながら言った。 
「すまぬ……見失ってしまった……」 

 水中を引きずられる夕映は、気絶しているかのように全身を脱力させ、引っ張られるままになっていた。しかし、夕映は意識を失っていなかったし、それどころか恐るべき冷静さを発揮していた。 
(まず、足首をここまで強烈に拘束されている以上、立ち上がることは不可能。です。ということは、水面に顔を出して呼吸するのはあきらめなければなりません) 
 そう判断した夕映は、無駄な抵抗をいっさい止め、今肺にある酸素だけで可能な限りやっていくことを決断した。 
 手足を振り回して暴れることはもちろん、恐怖に体を強ばらせることすら余計な酸素を消費する。  
 恐ろしい出来事に対して、力を入れて対抗するのは誰にでもできる。しかしこの場合、力を抜いて対抗しなければならないのだ。 
 夕映はその小柄な体に似合わぬ自制力を、絞り出すように使い、恐怖心から体のコントロールを守り続ける。 
(いったいどんな罠かわかりませんが、もしこれが犠牲者を溺死させようとするものなら、えんえんと引きずり回すために円を描くように動くはず。しかしここまで一直線に引きずってきた以上、どこかでストップする可能性が高いです。それまでなんとしてでも……!) 
 しかし、夕映の予想をあざ笑うように、夕映は水の中を引きずられ続ける。 
 夕映の意識がうすれかけた頃、唐突に彼女は空気の中に放り出された。 

「ぷはぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ」 
 待望の新鮮な酸素を、むさぼるように肺にとりこむ夕映。 
 無我夢中の深呼吸のあと、彼女はようやく、自分が仰向けに横たわっていることに気がついた。 
 おそろしく高いせいで夜のように真っ暗な天井には、ところどころ巨大な星のように照明がかがやいている。横たわった感触からして、下は土のようだ。 
 と、夕映はそこでようやく、自分の足首にまだ締め付ける感触があることに気がついた。 
(はやくこの足に巻き付いたものを外して、みんなのところへ帰らなければいけません。こんな深部で、地図無しに取り残されたらとうてい帰れません) 
 横たわったまま、夕映は自分の制服の内ポケットに触れた。そこには確かに、地図の感触がある。引きずられている最中、これだけは落としてしまわないようにと大急ぎでしまったのだ。 
 背負った荷物も、頭にとりつけたライトも持ってかれていない。 
 荷物が無事なことに安心した夕映は、ぐっと体を起こした。頭のライトは壊れていなかったので、自分の足首を照らす。そして、足首に絡みついているものを見て、眉をひそめた。 
 夕映は、てっきりワイヤーか何かが絡みついているものだとばかり思っていた。しかし彼女の足首をがっちりと掴んでいるのは、缶ジュースほどの太さを持つ、黒く汚れた緑色の、蔓だった。 
(植物? いやしかしあの力は……) 
 ライトの光で、蔓をたどっていく。ほんの数メートルほどさかのぼった所に、それはいた。 
「なっ……!」 
 直径およそ3メートルにも及ぶ、巨大な花。 
 人が簡単に寝そべれる5枚の花弁は、ベッドのように肉厚で青黒い色をしている。 
 茎は無く、花は直接地面から生えているようだったが、土との付け根のあたりから夕映の足を掴んでいるのと同じような、太い蔓が何本も放射状に伸びている。 
 世界最大の花、ラフレシアをさらに数倍する大きさと醜悪さを持つ、悪夢から迷い出てきたよう奇怪な植物だった。 

(こ、これは……見た目の異様さも常識の外ですが、そもそも私の足を掴んで引っ張ったあの動き、本当に植物なのですか?  
いや、オジギソウは圧力に反応して敏感に動きますから考えられないことではありませんが、こんなろくに光も届かないところでどうやってこの巨体を維持して) 
 夕映がそこまで考えたところで、彼女の足を掴んでいた蔓が跳ね上がった。 
「ああっ!」 
 抵抗しがたい力で引っ張られ、夕映の小さな体が悲鳴の尾を引いて宙に舞う。 
 バスっと重く柔らかい音を立てて落ちた先は、巨大な花弁の一つだった。見た目通り湿った分厚いカーペットのような感触で、夕映はあまり痛みを感じなかった。 
 うつ伏せの体勢で落ちた夕映は、落下のショックからすぐさま立ち直ると、四つん這いになって逃げようとする。その途端、右手に新手の蔓が巻き付いた。 
「くっ」 
 今度の蔓は足首に巻き付いているものと比べるとだいぶ細く、太字のマジックペンほどの太さだ。 
 夕映は自由な左手で蔓を掴み、思い切り引っ張った。しかし妙に弾力があり、歯を食いしばってぐいぐいやってもまるで千切れる気配がない。そうこうするうちに、その右手にも三本目の蔓が絡みつく。同時に、右足にも同じ感触。 
 両手両足を掴んだ蔓は、意志ある者のごとく一斉に夕映の手足を引っ張った。夕映は植物の花弁の上で、無様に大の字で固定される。 
「うう……」 
 うめきながら、顔をあげる夕映。頭のライトが巨大花の中心を照らし出していた。そこには何十本もの雄しべらしき触手が不気味にうごめいている。 
 触手はそれぞれ先端がぬるぬると濡れており、花弁と同様の青黒い色をして、節くれだっている。 
(わ、私はアホです。この手の植物が、巨体を維持する栄養をどうやって手に入れるかなんて、わかりきっていました……!) 
 夕映の予想を裏付けるかのように、無数の雄しべがゆっくりと伸び、夕映の方へと近づいてきた。 
 ぬるぬるした先端を、空中を探るように動かしながら、雄しべの触手が夕映の顔にむけてやってくる。 
 夕映は痛みを予想して体を強ばらせる。手足を引こうとしたが、蔓の力が強すぎてそれすら許されない。 
 触手の先端が、ひたりと夕映の頬に触れた。夕映の体がビクリと震える。 

(………………?) 
 痛みも、熱もなかった。夕映は、この『食人植物』の雄しべが分泌している液体は、てっきり消化液だと思っていたのだが、酸に触れた時特有の、火傷したような痛みを感じない。  
 ぬるりとした粘液の感触は気色悪いが、すぐさま肌にダメージがあるようには思えなかった。 
(ゆっくり溶かす消化液なのでしょうか……?) 
 雄しべはさらに伸張し、夕映の頬から首をつたい、さらに襟から服の中に侵入する。 
 先陣をきった雄しべに追随するように、何本もの雄しべが夕映の体に次々とまとわりつく。 
 舐めるように夕映の額、頬、顎をまさぐったかと思うと、大抵はそのまま肌にそって襟から服の中へ遠慮無しに入っていく。 
(うう、気持ち悪いです……) 
 顔を粘液でべとべとにされ、何本もの触手に素肌をまさぐられる感触に、夕映は歯を食いしばり、目を閉じて耐える。 
 すでに十本以上が首から服の中に入っている。脇腹をくすぐるもの、ひじの辺りに巻き付くもの、背中にその身をうねらせるもの……夕映の体を好き放題探っていた。 
「あっ」 
 と、夕映は思わず声をあげた。胸側から侵入した触手の一本が、あろうことか彼女のブラの中に入ってきたのだ。 
 年齢にしては発育のよくない胸の膨らみを、遠慮無しに触手はまさぐった。濡れた先端が、夕映の敏感な突起を刺激する。 
 不快感まみれの中、不意に訪れた快感に、夕映は思わず震えてしまう。 
 すると、夕映の反応を感じたのだろうか、五本もの雄しべがさらに夕映の胸元に侵入してくる。それまでの、暗がりを手探りするような動きと違い、はっきりとした目的があることを見せる直線的な動きだ。 
 計六本の雄しべたちは、夕映のブラの内側にもぐりこむと、それぞれ三本ずつに分かれて夕映の薄い両乳房をこねまわしはじめる。 
 一本がしぼるようにして夕映のふくらみに巻き付いたかと思うと、一本はぬるぬるした表面をこすりつけ、一本は戯れるように乳首をつつく。 
 胸から送り込まれるむずむずするような感覚に耐えかねて、体をくねらせる夕映。両手両足をがっちりと蔓に拘束されているため頭と胴体をわずかに左右にくねらせることしかできず、それがひどくもどかしい。 

 植物に胸をいじりまわされるにつれ、ぐっしょりと濡れてすっかり冷たくなったはずの夕映の体が、次第に熱を帯びてきた。 
(うう……こんな状態で、まさか私は興奮しているのですか。いえそんなはずはありません。確かに私はすでに自慰行為を覚えていますが、いくらなんでも植物に体をまさぐられて感じるなどありえません、ありえません、ありえるはずがありま) 
「ひあああっ」 
 一心に念じていた夕映はびくりとのけぞって声をあげた。 
 胸にばかり気を取られていて気づかなかったのだが、雄しべの何本かはすでにパンツの中にもぐりこんでいたのだ。 
 そしてそのうちの一本が、大胆にも夕映の開かれた股にまで到達し、大胆にもその奥の割れ目に頭を突っ込んだのである。 
 その雄しべは、自分の入り込んだ場所に戸惑うかのように、先端を突っ込んだままぐりぐりと動かす。 
「あ、あっ、あっ、ああ────っ」 
 胸への刺激で性感がたかまり、その中途半端な状態をもどかしくすら思っていたところへ性器を直接に刺激されたのだ。夕映は手足を拘束する蔓が許してくれる範囲で体をうねらせた。 
 胸への刺激に反応してしまった時と同様、何本もの雄しべが新たに夕映の股間に殺到する。 
 すでに先端を突っ込んでいた雄しべはさらにずるりと奥へともぐりこみ、そこに押し入るようにもう一本、細めの雄しべが侵入した。 
「うくっ、そんな、奥は……」 
 通常なら痛みを感じたかもしれないが、雄しべは全体がしっかりと濡れているのでスムーズな挿入感だった。むしろ今の夕映には快感の大波を受け入れるのに精一杯の状態である。 
 しかしさすがに、夕映の中に入れるのはその二本で限界である。せっかく夕映の股間にやってきたのに、締め出しをくった何本かの雄しべは、仕方ないといった感じで細めの腿に巻き付いたりしたが、そのうち一本は未練がましく割れ目の少し上をさぐっていた。 
 それがちょうど、夕映の体の中で一番敏感な肉珠を思いっきりつついた。 
「あ、だ、だ……だめです―――ッ!!」 
 湖全体に聞こえるかと思うほどの叫びと共に、夕映の体が激しく痙攣した。 
 そして時が止まったかのような一瞬の硬直のあと、がくりと脱力した。 

 夕映の濡れたスカートに、新たな液体が染みこんでいく。止めどなく夕映の股間から流れ出てくる黄色がかったそれは、彼女の尿だった。 
(あ……私、おしっこ漏らしてます……こんな植物にあえがされたあげく、漏らしてしまうだなんて……ああ、でも止まらないです……) 
 夕映の失禁は、スカートから花弁に小さな川を作り、その下の地面にしたたり落ちるようになってもまだ止まらなかった。 
 紙パックのジュースをたくさん飲んでいた上に、冷たい水に長い間つかって体が冷えていたためか、彼女の小さな体からは想像できないほど長い失禁だった。 
 およそ一分も経っただろうか。下の土がついに吸収し切れなくなり、小さな水溜まりができる頃になってようやく夕映の放尿は止まった。 
 と、それとほとんど同時に、彼女の体中にとりついていた雄しべが、するすると引き上げていく。 
(……?) 
 虚ろな意識の中、夕映が不思議に思いながらその様子を眺めていると、最後の雄しべが夕映の襟から抜け出すと同時に手足の拘束が緩んだ。 
 ゆっくりと右手を引いてみると、簡単にほどける。左手と両足も同様だった。 
 恐る恐る、四つん這いになって花弁から降りる夕映。何歩か、巨大花の方を向いたまま後ずさってみたが、巨大化は一切反応しない。 
 しかし、死んでしまったようには思えない。もともと毒々しい色をしているので矛盾した印象になるが、むしろ先ほどより生き生きとしている。 
 夕映はこめかみから汗を流しながら思った。 
(まさか……まさか私のおしっこがこの花の栄養になった、というわけでしょうか……。それでは最初から、この花は私を食べようとしていたのではなく、それが目的で……?)  
 夕映は少しふらつきながら、安堵とあきれの混じった深いため息をついた。 

 湖のほとりで、ネギたちは、火をつけた携帯燃料を囲んで座っていた。 
 皆一様にうつむき、言葉を交わしもしない。 
 夕映が連れ去られてから、何度か彼女を捜しに行こうという提案があった。 
 しかしこの暗がりと霧に加え、唯一の地図が夕映と一緒に湖の彼方という状況では、二重遭難となるのは明らかだった。 
 当然戻るわけにも行かないし、外にいるハルナとのどかは体力的にここまで来ることはできない。八方ふさがりの状況である。 
 唯一、ネギと明日菜だけは、ネギの封印が解ける時まで待てばなんとかなることを知っていたが、果たしてそれまで夕映が無事でいられるだろうか。 
 際限なくマイナス方向へマイナス方向へと思考が進み、彼女らは目の前で静かに燃える携帯燃料を見つめる以外、指一本動かすことができなかった。 
 と、暗がりの向こうから、足音。 
 真っ先に気づいたのは楓だった。 
 立ち上がり、その方を鋭い目で睨む。 
「どうしたの?」 
 他のメンバーも立ち上がって、楓の視線を追った。 
 今や、うっすらとではあるが確かに見える。 
 小柄な人影が、長い髪の毛を揺らし、こちらへ駆けてきていた。 
「「夕映────────っ!!!」」 
 明日菜たちは、一斉に走り出した。 
  

   第八話 終わり 
  

次回予告! 
 地下に落とされたバカレンジャーたちだったが、そこは地底にもかかわらず光に満ちた快適な空間、地底図書室だった。 
 帰ってきたものはいないと脅す夕映だが、ネギの提案でみんなは試験に向けて勉強を開始する。もし、つかの間の休息中、ネギが先生イジメにあったら……? 乞うご期待! 


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