
TOPMAN
心に灯るTOPMAN
夕色の水面が眩しい
夕影は長かった
もうすぐ日没か
家路を急ぐ雑踏のなかで、俺は独り足を止めた
橋の縁に頬杖をついて、今日の出来事を思い返す
俺は単位を落とし
留年が決定した
友人の前では笑い飛ばしてみたが
独りになった途端空しくなった
怒りも後悔もなかった
ただただひたすらに空しかった
何をやってんだろう
俺はこの一年何をやってきたんだ
その答えはあまりにも空しく
俺はまた肩を落とした
どのくらい時間がたったのだろう
空には月が出ていた
また無駄な時間を過ごした
夜風にさんざめく葦草が俺を嘲笑っているかのようだ
…帰るか
もう…泣きたい
「ただいま」
言ってみたものの俺は一人暮らし
返事があるはずもない
「お帰り兄貴」
「なっ!」
めちゃくちゃびっくりした
台所から妹がひょこっと顔をだした
「なんだ亜子か…勝手に上がりこんで人の部屋で何しとる」
「何って今日兄貴の誕生日やん。ほらケーキ」
「あ…そうか…」
「はい、どーぞ!」
切り分けたケーキを亜子が差し出す
市販のケーキだった、でも十分うれしかった
「ああ、いま手洗ってくるわ」
なんだか癒されたな
妹に癒されてるようじゃ、俺も末期だけど
手を洗って、ダボダボした楽な服に着替える
脱いだ服は一緒くたに洗濯機に突っ込んだ
居間に戻ると亜子はもう帰る用意をしていた
「もう帰るんか?」
「うん。ケーキとお茶そこに置いといたで」
「お前も食べてけよ」
「う〜ん明日五時起きやから、早めに寝とかんと。今日はかえるわ」
「…部活か?」
「そ!」
亜子は靴を履きながら俺に背を向けたまま答える
少し背、伸びたみたいだな
少しは女らしくなったのか
俺の妹だけあって、結構かわいいかもな
「亜子…お前彼氏できたか?」
「ん〜まだ…っていうかフラれた。もう気にしてないけど〜」
彼氏はいない…
フラれた…か
「何や?怖い顔して」
「………亜子」
「ん?」
「う、ううう!うおおおお!!!!」
「ひゃっ!」
ズガ―――――――――――――ン
俺は思い切り壁に頭突きをした
何考えてんだ俺は
死ねよ
「わわわわ、ななな何や一体?」
「フッ、大学生にもなると皆こうやって頭突きするんや」
「ふーん変な兄貴」
訝しげに亜子が俺を見る
「ほっほら、急がんと電車なくなるで!ホレホレ」
「わわっなんや、さっきはケーキ食ってけって言ったくせに」
俺はなんだか慌てて亜子を急かす
「もう!そんじゃーね兄貴」
亜子は小さく手を振ると部屋を出ようとした
「あ、亜子!」
俺は慌てて呼び止めた
「なに?」
「その…今日はほんまありがとな!」
「うん、どーいたしまして」
姿が見えなくなるまで見送ったあと部屋に戻った
頭突きで壁がへこんでた
アホだな俺は
しみじみ思った
ケーキを食ったら少しやる気がでた
あんまクヨクヨすんのはやめた
もっかい頑張ろうと思う