
P.T ◆3QNEGIp2Uc
注意! この作品にはエロがほとんどありません
夕刻の教室。
いつもは騒ぎに満ちた3−Aの教室だが、今はひっそりとしていた。校庭から、ソフトボール部のものだろうか、遠い歓声が聞こえてくる。
しかし無人というわけではない。
五月が自分の席で肉まんをぱくつきながらレシピ集を見ており、ザジは窓枠に座って足をぶらぶらさせながら、小鳥に餌付けをしている。
後ろの方では千鶴が壁によりかかりながら、メモ帳になにやら書き付けていた。
そしてもう一人。
夏美は一人机に肘をつき、長いため息をついた。物憂げな瞳は、窓の向うのクロワッサンの形をした雲を、眺めるともなく眺めている。
そこに後ろから忍び寄る、一つの影。
影は突然、何も気づいていない夏美に襲いかかった。
「きゃああっ!」
静かな教室の中に、夏美の悲鳴が木霊した。
謎の影は手をまわし、夏美の胸を掴む。
「いやあっ、やめて!」
振り回される夏美の手足をものともせず、手は夏美の胸を揉みまくる。
もっとも、「揉む」といえるほど夏美の胸は大きくないのだが。
「やめて、やめてったら千鶴ちゃん!」
夏美がそう言うと、影………千鶴はようやく、友人とのスキンシップ(と彼女は主張している)を中止した。
夏美の正面にまわりこんだ千鶴は、相手の顔をのぞきこみながら言う。
「どうしたの夏美ちゃん、ため息なんかついて〜。今ので35回目よ」
千鶴はメモ帳を見せた、そこには「正」の字が7つ並んでいる。
夏美は千鶴をちらと見て、ふん、とそっぽを向いた。
「千鶴ちゃんには理解できない悩みよ」
冷たい態度を取られたにも関わらず、千鶴は笑顔を絶やさない。
「あ、わかった。ま〜た胸のことで悩んでるんでしょ」
夏美は相変わらずそっぽを向いたままだったが、その肩がぴくっと震える。図星らしい。
確かに夏美の胸は小さい。だが、このクラスには、鳴滝姉妹やエヴァンジェリンはともかくとして、のどかや夕映、まき絵など、夏美以上の洗濯板が何人もいる。
それでも彼女が悩んでいるのは、付き合いの多い友人に、なぜか並外れた巨乳が多く、自分が引き立て役になってしまうからだろう。
「ふふっ、どうやら夏美ちゃんは真剣に悩んでいるようね。それじゃあ彼女の出番だわ」
「………彼女?」
思わず夏美は千鶴の方を振り向いた。
千鶴は窓に座っているザジに向かって叫ぶ。
「ザジちゃん! 彼女を呼び出して!」
ザジはこくんとうなづくと、小鳥を外に放し、自分の机に向かった。
机脇の荷物の中から、シルクハットとステッキを取り出す。
シルクハットを逆さにして机に置き、ステッキでそれを指して言った。
「ワン、ツー、スリー」
ボンッというくぐもった音とともに猛烈な白煙があがった。
その煙の中から、ハトや万国旗と一緒に、チャオが飛び出してきた。なぜか手にはハンドクリーナーらしきものを持っている。
チャオは開口一番に言った。
「話は全部聞いていたネ! ワタシに任せるヨ!」
呆然としていた夏美は、おそるおそるきいた。
「聞いていたって………どこで? どうやって?」
「それは言えないネ」
「なんで?」
「言ったらザジの手品の種を教えることになるネ。そんなことしたら>>539->>542ののどかみたいな目に合わされるヨ」
「そ、そう。なら別にいいわ………」
これからザジを見る目が変わってしまう、そう思う夏美だった。
「まあそれはともかく、ワタシのこの新発明を使うといいネ」
「新発明って、そのハンドクリーナーのこと?」
「確かにカバーはハンドクリーナーのものを流用したネ。でも中身は別物。名付けて」
どこからかピコピコーンという、ドラえもんの道具出し音が教室に鳴り響いた。
「脂肪自在機〜」
大山のぶ代の声真似までしている。
「この道具はね、のび太くん、スカラー波を利用して脂肪を」
「誰がのび太よ! 日本文化に対する理解はわかったからはやく説明して!」
掴みかからんばかりの勢いで夏美は言った。目がちょっと血走っている。
そんな夏美にちょっとビビリながら、チャオは続けた。
「ま、まあ見てもらうのが一番ネ。五月、ちょっと来るヨ」
「ん〜」
呼びかけに応じ、五月がドスドスと足音も大きくやってくる。手には肉まんを持ったままだ。
「五月、ちょっと上着を脱いでもらえる?」
「いいよ」
と五月は、特に恥ずかしがる様子もなく下着姿になった。
さすがはクラス1の大食漢だけあって、鏡餅みたいな体型である。
チャオは五月の前に立つと、ハンドクリーナー改め脂肪自在機を構えた。
「吸引にセットして………スイッチオン!」
爆音をあげて動き出す脂肪自在機。チャオは吸気口を、五月の体のあちこちに当てた。
驚くべき変化が起こった。
たった一分で!!!
魔法瓶そこのけの太さを持っていた腕が
枯れ枝のような細腕に生まれ変わり………ッッッ
銀行の大金庫の扉よりも厚かった腹は
水風船を圧縮したようにくびれ………ッッ
大型トレーラーのマフラーのように肥えていた脚は
サラブレットの優美さとカモシカの可憐さを備え、細さときたらキリギリスさながらである。
夏美はしばらく口をあんぐりと開けて硬直していたが、やがて絞り出すように言った。
「し、信じられない…………あのふくよかな体型(友情を壊さないために考案されたデブの別称)の五月ちゃんが、こんなスレンダーになるなんて………」
「驚くのはまだはやいネ。今この脂肪自在機の中には、五月から吸い取った脂肪がたっぷり入っているネ。しかもこの機械は、吸い取るだけでなく、注ぎ込むことも可能。つまり胸に当てて注入ボタンを押せば………」
ゴクリ、と夏美は唾を飲んで続きを待った。
「楓やしずな先生クラスはもちろん、やろうと思えばYカップだろうがZカップだろうが、望むままネ!」
夏美は、すっと一歩踏み出した。
「私、贅沢は言わないわ………」
ぱしっと胸の前で祈るように手を組み、チャオの顔をうるんだ瞳で見つめた。
「お願いっ、私をDカップにしてっ!」
充分贅沢じゃねーか、とチャオは内心思ったが、口には出さなかった。
「まかせるヨ! さあはやく胸を出すネ!」
「ええ!」
勢いよく応えると、夏美は制服の前をはだけ、シャツをたくしあげ、ブラをずらした。
ささやかな胸のふくらみと、その先端の可憐な突起があらわになる。
「あ〜あ、このかわいい夏美ちゃんの胸も見納めかぁ」
心底残念そうな千鶴を、夏美は一喝する。
「余計なこと言わないで千鶴ちゃんっ。はやく、はやく私を貧乳の牢獄から解き放って!」
「では、注入にセットして、スイッチオン!」
夏美の胸にあてがわれた脂肪自在機が、爆音をたてはじめた。
見る見るうちに夏美の胸が大きくなる。
「おお!」
夏美が歓喜の声を漏らしたのもつかの間、風船をふくらますように体積を増していった乳房が、ぽとんと落ちた。
「………………え?」
床に落ちた丸くて白い脂肪の固まりは、ぽよんと大きくはずむと、五月の顔にぶつかった。
すると脂肪の固まりはそのまま五月の顔と合体し、五月の顔が元のふくれた形に戻ってしまった。
「も、もう一度試すネ!」
しかし、何度やっても同じだった。
増やした脂肪はすぐに夏美の体から離れてしまい、ぽんぽんはずみながら、帰巣本能でもあるかのごとく五月の体へと戻っていく。
あっという間にチャオは、五月の体から吸い取った脂肪を使い切ってしまった。
夏美は、薄い胸をはだけたまま、放心状態で固まっている。
一方、もとのぷくぷくした体に戻ってしまった五月はというと、さして堪えた様子もなく、あむっと手にした肉まんにかぶりついた。
チャオは石化したままの夏美の服を戻してやると、重々しく言う。
「原因は一つしか考えられないネ」
ビシっと夏美の体を指差し、
「夏美の体が、巨乳になるのを拒否しているネ!」
それを聞いて、夏美は石化が解けたようだった。
顔色が、さっと青くなる。
「そんな………それじゃあ私、一生この体型のまま………いやああああああああああああ!」
夏美は駆け出そうとして、千鶴の体を押しのけた。
「ちょ、きゃあっ」
バランスを崩した千鶴が思わず夏美の服を掴んでひっぱってしまい、二人は仲良く、並んでうつ伏せに倒れた。
『いたーい』
ハモリながら、二人は痛む場所をさすりながら起き上がる。
しかし、同じようにうつ伏せに倒れたにも関わらず、さすっている場所が違っていた。
夏美は鼻の頭を、千鶴は両胸を。
そのことに気づいた夏美の瞳に、大粒の涙が浮かび上がる。
「ど、どうせ私なんか、私なんか〜!」
叫びながら、夏美は教室を飛び出していった。
「夏美ちゃんっ」
「夏美、待つネ!」
「夏美〜」
千鶴、チャオ、服を着直した五月が、夏美を追ってバタバタと出て行った。
教室には、一人ザジだけが残された。
再び沈黙の支配する教室の中、彼女は机の上に置かれたままの、逆さまのシルクハットに手を突っ込んだ。
その手を出すと不思議なことに、とてもシルクハットにおさまるはずのない、ティッシュ箱二つ分の大きさはあるラジカセが出てくる。
ザジが再生スイッチを押すと、歌が流れ始めた。
♪ ペチャパイ この小さな胸で ペチャパイ 夢が育ってる
ペチャパイ きっとこれから ペチャパイ 輝きだすよ
また明日バイバイ 友達に手を振ってひとり
帰り道でコケた ただそれだけだったのに
子供みたいになぜか 大声で泣きたくなったよ
大好きなあなたを 今ここで抱きしめたい
最高に魅力的な 彼女になりたいよ
ぜったいに 後悔させないわ
場面が変わり、学校の廊下。画面の左端に夏美が泣きながら走り、右端にそれを追いかける三人が映っている。
♪ ペチャパイ この小さな胸で ペチャパイ 守ってあげる
ペチャパイ 私のあだな ペチャパイ よせてあげてた
嫌われたくないと 鏡を見てばかりいるより
まずはドカンと一発 私の心をみがく
本当の”やさしさ”ってどんなカタチだろう
あなたには 笑っていて欲しい……
走る夏美たちの画面がゆっくりと暗くなり、下からスタッフロールがスクロールしてくる。
出演
貧乳少女 村上夏美(モブ☆ガールズ)
巨乳少女 那波千鶴(モブ☆ガールズ)
肥満少女 四葉五月(ハイケイ・スリー)
発明少女 超鈴音(ハイケイ・スリー)
手品少女 Zazie Rainyd(ハイケイ・スリー)
幽霊少女 相川さよ(デバンナーイ娘。)
村娘 椎名桜子
町娘 釘宮円
市娘 柿崎美砂
子供その4 龍宮真名
多脚砲台 絡繰茶々丸
アンジェロ岩 和泉亜子
ボヨヨン岬 明石裕奈
月影先生 古菲
恐ろしい子 佐々木まき絵
SPEEDの中で一人だけダウトのあいつ 大河内アキラ
「ツインズ」のシュワルツェネッガーの方 鳴滝風香
「ツインズ」のデビートの方 鳴滝史伽
麻帆良ドッジ部黒百合のみなさま
♪ ペチャパイ この小さな胸で ペチャパイ 愛が育ってる
ペチャパイ マラソン速い ペチャパイ Tシャツ伸びない
ペチャパイ 匍匐前進速い ペチャパイ やせて見えるよ
ペチャパイ 痴漢にあいにくい ペチャパイ 年とってもたれない
胸が人より軽い分だけ 誰よりも早く走りだせるわ
夢が逃げちゃう前に急いで 運命の一歩を踏み出そう
スタッフ
カメラ 朝倉和美
絵コンテ 早乙女ハルナ
CG効果 長谷川千雨
殺陣 桜咲刹那
時代考証 綾瀬夕映
方言指導 近衛木乃香
鉛筆削り 葉加瀬聡美
ツッコミ 神楽坂明日菜
ヘタレ 雪広あやか
さんぽ 長瀬楓
性欲処理 ネギ・スプリングフィールド
俺だけの天使 エヴァたん
エンディングテーマ
「ペチャパイ」
作詞・作曲 ブリーフ&トランクス
歌 宮崎のどか
♪ ペチャパイ とっても強く ペチャパイ 愛してあげる
ペチャパイ 仰向け苦しくない ペチャパイ 肩が凝らない
ペチャパイ ノーブラでもバレない ペチャパイ カバンくいこまない
ペチャパイ おフロ溢れない ペチャパイ あせも出来にくい
ペチャパイ この小さな胸で ペチャパイ 愛が育ってる
ペチャパイ この小さな胸は ペチャパイ あなた専用
企画・演出・脚本 P.T ◆3QNEGIp2Uc
音楽の終了と共に、大量の下着を抱えたカモが画面を右から左に駆け抜ける。
その時落としたいくつかの下着が、3文字のアルファベットを形作っていた。
E N D
(エンドマークの後、走り込んできた少女が一人)
春日美空「あの、私の出番は……?」
すまん、お前のこと背景とすら認識してなかった。