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ifネギま! 〜 一話一妄想 〜 

第十話 



 ゴーレムから逃げるため、地上直通のエレベーターにたどり着いたネギとバカレンジャーたちだったが、エレベーターの重量制限をクリアするためにせっかく手にいれた魔法の本と共に荷物も服も全て捨ててしまった。 
 とにかく地上へ出られたことは出られたのだが……。 


 チーンという金属音を模した電子チャイムが鳴り、エレベーターの扉がゴウン…と軽い音をたてて左右に開く。 
 ゆっくりと広がっていく隙間から、まばゆい光の塊がバカレンジャーたちに降り注ぎ、彼女らは思わず「わっまぶし」と声を上げる。 
 エレベーターの扉が完全に開き、乗っていた7人たちは次々と外に出た。 
 扉はちょうど図書館島の真東に位置しているようだ。はるか向こうに見えるなだらかな山々の間から、目を灼かんばかりに輝く光球が半身をのぞかせている。 
 空は透き通るように高く蒼く美しく、明日菜やまき絵、ネギに楓にクーはその光景に思わず立ちすくんで見とれてしまう。木乃香と夕映は朝日にはあまり関心が無いらしく、なにやら二人で話をしていた。 
 しばし言葉を失ってしまった5人だが、やがてまき絵が口を開いた。 
「まあとにかく……外に出れたーッ!!」 
 一緒になってクーも叫ぶ。 
「いえーっ」 
 その横で、明日菜がぼそっとつぶやく。 
「服どーしよ……」 
 と、明日菜に後ろから木乃香が声をかける。 
「あのなアスナ、いまのどかたちと連絡とったんやけど」 
 木乃香は片手で、小さなケータイを示しながら言う。 
「ウチらの服持ってくるのに三十分くらいかかるって」 
 彼女の方を振り向いた明日菜は、ちょっと眉を上げて応える。 
「ん、分かった。でもよくケータイなんて持ってたわね」 
 木乃香はにへっと笑うと、傍らの夕映に視線をやった。 
「夕映がこれだけは捨てんといてくれたんや」 
 ね、と木乃香が夕映に向かって小首をかしげると、夕映は少し恥ずかしそうな顔でうなずいた。 

 明日菜はふうっと表情から緊張を抜いてため息をつく。 
「まあ、三十分ならこれから寮に帰っても、勉強する時間がだいぶあるわね」 
 その言葉を聞いて、ネギが思わず小さくガッツポーズを取る。 
(むむ、アスナさん、すごいやる気だ! 魔法の本をなくしたのに、それを気に病んでいる様子もないし……これなら最下位脱出も夢じゃないっ) 
 そうネギが思っていると、くしゅんっ、というくしゃみの音が聞こえた。 
 音の方を振り返ると、まき絵が自らの体を抱きしめるようにして身をすくめている。 
「まき絵さん……?」 
 ネギの心配そうな声に、まき絵はニコっと笑顔で応えた。 
「あ、ネギくん心配しないで。ちょっと寒くて……」 
 しかし彼女の体は、足先から肩まで細かく震えている。 
 さきほどまで、ゴーレムとの追いかけっこで火照っていた体が急速に冷めてきたのだろう。この季節・この時間帯にパンツ一枚で肉付きの薄い裸身を外気にさらしているのだから無理もない。 
 ネギの顔がさっと青ざめる。彼はわたわたと手を振ってまき絵に向かって乗り出すように言った。 
「い、いけません! 風邪でも引いたら大変です。えーとえーと……」 
 彼はあたりをきょろきょろと見回したあと、あっと叫んで自分のパジャマの上を脱いだ。それをまき絵に差し出して言う。 
「こ、これを着てください!」 
 その瞬間、今度は彼の真後ろで、ちゅんっという小さなくしゃみ。 
 振り返ると、夕映がやはり胸を隠すように両腕を体に密着させ、震えている。その隣では、木乃香がやはり寒そうに首をすくめている。 
(あわわわわわどーしよーっ! 服は一枚しかないのにーっ) 
 全身にエネルギーがありあまっている明日菜・クー・楓の三人はあまり気にしていないようだが、まき絵たちは全体にスレンダーな体型ということもあって寒さへの耐性が低いらしい。 
 風の魔法が使えれば、温かい空気で彼女らを包み込むことも可能だが、まだ封印は解けていない。 


 ネギが目をぐるぐるにして慌てふためいていると、まき絵が突然明るい声を出した。 
「そうだ! おしくらまんじゅうよ!」 
 片手を高々とあげるまき絵。が、寒かったのかすぐに手を引っ込める。 
「あ、それいい考えやなー」 
 とすぐに賛成する木乃香。 
「おしくらまんじゅう? 何年ぶりかな〜」 
 と、明日菜は微笑みながら言った。 
 楓もニンニンと、夕映はこくこくとうなずいている。 
 日本の習俗を知らないネギは、おしくらまんじゅうと聞いて首をかしげた。まんじゅうと言ったらアジアで食べられる、豆を原料にしたジャムを包んだパンのようなお菓子のはずだが、体が温まる食べ物なのだろうか、などと考えてしまう。 
 ネギの疑問を、クーが代弁してくれた。 
「おしくらまんじゅうって何アルか?」 
 すかさず夕映が答える。 
「寒いときによく行われる子どもの遊びです。みんなでひとかたまりになって、『おしくらまんじゅうおされて泣くな』とかけ声をかけながら、お互いに押し合います。 
外気に触れる表面積を減らすことで体温の低下を押さえ、なおかつ動かない対象物相手に筋力を発揮する、いわゆるアイソメトリック・トレーニングを行うことにもなります。アイソメトリック・トレーニングとは等尺性運動という……」 
「あー、もういいアル。だいたいわかったからはやく始めるアル」 
 夕映の説明を聞いていて頭がくらくらしてきたらしく、クーは慌てて両手を振り、夕映の説明をさえぎった。 
 一方明日菜は、ひょいっと上半身を倒し、ネギと視線を同じ高さにする。 
「ネギ、今の説明でわかった?」 
「はい、だいじょう、くちゅんっ」 
 派手なくしゃみをしてしまうネギ。パジャマの上着を脱ぎ、上半身を裸にしたままだったのだ。 
 まき絵は差し出されたままのネギの上着を、ネギの方に押し返す。 
「いいよネギくん、それはネギくんが着てて」 
「え、でも……」 
 なおもパジャマを差しだそうとするネギに、まき絵は指を一本立てると、ウインクした。 
「大丈夫、おしくらまんじゅうやってたら、すぐに汗かくくらいあったかくなるから」 
 それから、七人は円形を作るように集まり、寄り添った。ネギも、明日菜とまき絵の間に挟まれるように立つ。 
「よーし行くよ」 
 とまき絵が音頭をとる。 
「おしくらまんじゅーおされてなくな」 
「「おしくらまんじゅーおされてなくなっ」」 
 一斉に唱和しつつ、円の中心に向かって体を押しつける。 
 ネギはぐっと足を踏ん張っていたつもりだったが、明日菜の肩に強く押されてしまい、よろけてしまう。 
 ぎゅうっと、頬が何か柔らかいものに強く押しつけされた。厚さは無いが強い弾力があり、すべすべとしていて中心に何か柔らかい突起がある。 
「きゃっ」 
 頭上から、悲鳴というには喜びの色が混じった声が振ってきた。 
 ネギが顔をあげると、そこには軽く頬を染めながらネギを見下ろすまき絵の顔。そこでようやく、ネギはまき絵の胸に顔を押しつけていることに気づいた。 
「もう〜、ネギくんたらっ」 
「あ、ご、ごめんなさいっ」 
 慌てて顔を離そうとするネギ。これまでゴーレムから逃げるのに必死だったのと、図書館島から脱出できて気が抜けていたせいで意識していなかったが、彼は6人の半裸の美少女に囲まれているのだ。 
 そのことに気づき、しかもあろうことか教え子の乳房に頬をすり寄せていたと知って、彼は顔を真っ赤にした。 
 しかしすぐにまき絵の両手が彼の後頭部にまわされ、再びネギの顔を自分のささやかながらきれいな形の胸に埋めさせる。 
「駄目だよネギくん、おしくらまんじゅうは体を押しつけあう遊びだよ。ほら、おしくらまんじゅうおされてなくなっ」 
 いいながら、まき絵は自分の胸でネギの顔を押し込んだ。 
「はうう〜」 
 ネギは困惑の声をあげながら、少女達の裸体で作られた林の中に埋まってしまう。 
「「おしくらまんじゅうおされてなくなっ」」 
 あらゆる方向から、かぐわしく柔らかなクッションを押しつけられたあげく、ネギは再び顔が柔らかいものに当たるのを感じた。 
 しかしその感触は、先ほどのものに比べて弾力にずっと深さがある。ぐにゅっと、厚い層にもぐりこんでいく感じだ。 
 ネギがおそるおそる頭をあげると、予想通りそこには楓の顔があった。 
「ん? ネギ坊主、暖まってきてるようでござるな」 
 楓はネギの紅潮した顔を見下ろしてそう言った。しかし実際には、ネギが顔を赤くしている原因は、彼が自分の頭が楓の豊満なバストに挟まれていることを知ったからだ。 
「「おしくらまんじゅうおされてなくなっ」」 
 かけ声がかかり、ネギはさらに強く楓の胸に押しつけられてしまう。頭全体を包み込むような、楓の溢れんばかりの女性的な感触。 
 胸だけではない。密着した腹部や足からも、楓の同年齢の平均を大きく上回る成熟した肢体がネギを包み込んだ。 
 ネギが不覚にも陶然となったその時、楓は仲間たちにまけじとつよい勢いで押し返す。その拍子にネギは少女たちの体でできた渦に巻き込まれ、流されるようにして移動する。 
 目の前でうねる、あるいは透き通るように白い、あるいは健康的に褐色の肢体。 
 パジャマの上からでも伝わってくる、はずむような肌の感触。 
 そこから伝わってくる、とろけそうな熱気。 
 空気にとけ込んだ、かぐわしく甘やかな吐息と汗と体臭。 
 五感に入ってくるもの全てが女という状況で、ネギは心身ともに翻弄されている。 
 ネギの動きが止まったのは、またしても別の少女の体と正面衝突した時だった。 
 ただし、今度は前二回のような柔らかい感触は無かった。その逆に、彼の額はゴツンと音を立てて何かかたいものにぶつかったのである。 
「あたっ」 
「あうっ」 
 反射的に、額を押さえて頭をすくめるネギ。しかし目の前で、自分と同じようなややひかえめな悲鳴があがったことで、顔をあげてみる。 
 そこには、ネギと同じように額を両手で押さえている夕映の姿があった。 
 同じく、すぐに夕映も顔をあげる。その瞬間、 
「「おしくらまんじゅうおされてなくなっ」」 
 ネギの体が背中から強く押される。ネギは転ばないように体を支えるため、図らずも目の前の夕映にだきつくような形になってしまう。 
 おせじにも発育がいいとはいえない夕映だから、ネギの体に伝わってくる感触はまき絵の時よりもさらに骨っぽい。 
 しかしそれよりも何よりも、距離が近い。身長がほとんど同じせいで、ネギと夕映の顔は、いまにも触れあわんばかりに間が狭まっている。 
「あ……」 
 頬を染めている夕映の吐息が、ネギの唇に触れてくすぐったく感じる。気のせいか、不思議のその温かく湿っぽい息に、甘い匂いが混じっているようにネギは感じた。 
 夕映の方もその距離の近さに目を伏せる。がしかし、顔を背けようとはしなかった。 
 あと一押し、あと一押しで夕映の可愛らしい小さな口の感触が……。 
「「おしくらまんじゅうおされてなくなっ」」 
 圧力は、真横から来た。 
 ネギはあっという間に花のような夕映の唇から引き離されてしまう。 
 横という予想外の方向から急に押されたために、ネギはバランスを崩し、上半身が泳いでしまった。 
 夕映の唇に名残惜しいと思う暇もない。このままでは倒れてしまうと、ほとんど無意識のうちに、何か支えるものを掴もうと手を倒れる方向に突きだした。 
「きゃっ」 
 その手のひらと指に、さきほどからさんざんお近づきになっているさわり心地。 
 加えて言えば、その声もまた、聞き慣れたものだった。 
 足を前にやってなんとかバランスを安定させたネギが、こわごわと頭をあげる。 
 まず、自分の手が中学生らしい発達の乳房をがっしりと握りしめているのが目に入った。 
 そしてその上には、ぎろりと半眼でネギを睨め付ける、明日菜の顔があった。 
「あ……」 
「このエロガキ〜〜っ!!」 
 明日菜が片腕を振り上げた。先端の手が拳を形作っている。 
「わあっ、ごめんなさいっ!」 
 ネギが反射的に頭をかばった瞬間、遠くからの声がネギを救いにやってきた。 
「みんな〜〜〜っ、待った〜〜〜!?」 
「服持ってきましたーっ」 
 いましもネギの頭頂部に鉄槌を下そうとしていた明日菜も含め、おしくらまんじゅうに熱中しはじめていた全員が声の方向を振り向いた。 
 そこには、おそらく7人分の服が入っているのであろう大きなリュックを背負った、はるなとのどかが、少しよたよたした歩調で向かってきていた。 
  

   第十話 終わり 


次回予告! 
努力のかいあって、2−Aを最下位脱出させ、さらに勢いあまって一位にまでしてしまったネギ。彼は無事、最終課題に合格し、先生を続けることができると学園長に告げられる。 
もしその後、先生を囲んで祝賀会が開かれたら……? 乞うご期待! 




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